タニオカアイ

ウソとホントの間の話

小林カツ代「実践 料理のへそ!」

料理の話になると、とたんに宗教戦争の様相を示すイメージがある。鉄フライパン教団や包丁真理教、パラパラチャーハンの塔に手打ち麺の光。どちらかというと各宗教内での紛争か。

養老孟司バカの壁」いわく、信じてるんだから理解し合えるわけないじゃん、ということらしいので、理解できないものを大切にしているんだなあと尊重し合えば平和なんじゃないでしょうか。

そういえば小林カツ代は鉄フライパン原理主義者だった。

子供や時短などをテーマにした著作もある中、平成15年に書かれた本書は大人一人の食事を中心としたエッセイ。料理研究家としての目線でライフステージに応じたエッセイは他にも男性向け料理教室や介護施設の本もあったような気がして、ものを書き続けている人の歴史みたいだ。

かつては著者の料理本ほどテーブルコーディネートも写真もきれいな料理本はみあたらなかったので重宝した。今はよくある工程も写真つきでわかりやすかった。

家庭料理が中心なので、材料調味料を使い切る、というところに配慮があるのも著者らしい。ちなみに子息のケンタロウはそれで一冊書いていて、ナンプラー料理が大量に載っていた。

独特といえば、

 卵料理には強めの火がよい、としつこく言いましたが、目玉焼きだけは弱めの火で焼きます。

 ほうれん草だけは必ずさらす、と言っといてナンですが生のまま、じかに炒めます。

などと強火やさらす重要性を熱く語った後にしれっと書いてあったり、「ピャッ」「ペニョーッ」をはじめ擬音のオンパレードなのは大阪人だからか。ゆるい。

ところで今わが家には牛刀と菜切り包丁があって、魚を触るのに小出刃があれば便利かな、と思っていた。本書で穴子包丁が紹介されていて、厚みが小出刃>鯵切り包丁>穴子包丁と取り回しやすそうなので探してみたい。

鍋や型にあらかじめ水を塗っておく、というのはこの人由来で記憶にあったけれど、タイトルになっている料理のへそ!を最も感じたのは

みんな、料理の途中で火を止めるのを、断じてやってはいけないこと、と思ってるようですが、火を止める、というのも料理の技の一つです。料理上手は、タイミングよく火を止める!

巻末にあるレシピは別として、メインは文章なので、そういえばレシピには著作権がないらしいけど、この書き方なら著作権発生するなというのは関係ない話。

レシピ本ではわりと根拠もしっかり書いてあった気がするんだけど、久しぶりにエッセイを読んでみたら「?」という部分もあったりしてこれは意外。それもまあ、美味しければいいのかもしれない。

実践・料理のへそ! (文春新書)

実践・料理のへそ! (文春新書)