タニオカアイ

ウソとホントの間の話

マシュー・アムスター=バートン 関根光宏訳「米国人一家、おいしい東京を食べ尽くす」

アメリカのフードライターである著者が、妻と八歳の娘とともに東京中野のアパートで過ごしたひと月のエッセイ。

街と築く関係と、人と築く関係。どこが違うかというと、街との関係はあきらかにポリアモリー的〔交際相手を一人に限定しない恋愛関係〕であるということだ。

街とりわけ食に関して国籍を問わず愛を抱く著者。愛読書である英語版「美味しんぼ」の山岡士郎も心につれての東京生活。

ザ・懐石ではなく、居酒屋やスーパー、中華や洋菓子など日々の食事風景がいかにもなアメリカンジョークや「美味しんぼ」ネタを交えて記されている。

愛というのは、相手の特徴を列挙したリストをもとに生まれるものではない。東京と僕は、互いにほほ笑み合っている。

というわけで比較的好意的に描かれており、だったらなぜ七月の東京、と思わなくもないが、それによる苦労を面白おかしく、また東京の特異性が描かれている。

参考書誌筆頭「美味しんぼ」ってどうなのと笑いをとりつつ、その他の参考資料をみてみると、どうやら単なる日本万歳さんでもないらしい。野心家でアクティブなのだろう。

八歳女児を連れた白人家族に対して一般の日本人がするであろう応対や日本万歳的外国人コメントが日本で評価される背景も込みで書かれたのではないだろうか。

仕事に飽きてバカンスに出かけることばかり考えて浮かれている人の心の状態(目的地のよい面ばかりに目を向けて、悪い面には目をつぶる傾向がある)

をバカンス頭(ヘッド)としている。

このごろキューバ話に触れる機会が多かったので、視点が違うと見え方が違うにしてもあまりにも多様な描かれ方をしている国にもやもやとしていた頭にはちょうどよかったかもしれない。

バカンス頭でゆるく楽しく読んだ。

米国人一家、おいしい東京を食べ尽くす

米国人一家、おいしい東京を食べ尽くす

Oishinbo: Ramen and Gyoza: A la Carte

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