タニオカアイ

ウソとホントの間の話

「あなたに期待はしていないし、まずは自分のことを完璧にしなさい」

特定の個人を師とする、というのは当人になれるわけではないのであまりない。ただ、他人の部分的な面それぞれから学ぶことは多い。

K氏はその集団の中でマイペースを貫き通し、表面上は他人に文句を言わせないという人だった。

契約上最低限の労働以外は関知しないというスタンス。職務を全うしたらあとは関わるなというオーラが全身から放たれていた。チームで協調、ということがスタンダードとされる中では突出した存在だった。

そのキャラクターが表面化されていたひとつとして、個別に自己紹介用の写真を撮影する機会があったとき、唯一拒否という姿勢で貫き通していたあたりにも伺える。

もちろん他職種との関わりでも必要最低限のコミュニケーションのみで完結する。上下内外関わらずアンタッチャブルな方だった。

能力的にはひととおりそつなくこなす人で、プラスアルファはしませんよ、といったところか。なにか割り切っていたのだと思う。

そこに至る紆余曲折はあったのだろう。

まだ職歴が浅かったころ出会ったK氏のイメージは、事前に要注意と言われていたこともあり、実際にも溢れんばかりの圧迫感を醸し出してくる「恐い人」だった。

しばらくは当方としても見えない地雷を踏まないよう汲々としていたように思う。ただしリアクションに期待しなければ他害もなく、他害するほど他人に興味もなかったのだろう。というわけで一度地雷を踏み抜いて大いなるリアクションがあったときは、それはそれで驚いた。

そんなK氏と人員の都合でペアリング認定されたときは自他共に大丈夫か、といった空気であった。

K氏との関わりで一番残っているのは、「あなたに期待はしていないし、まずは自分のことを完璧にしなさい」と言われたこと。

なにかとプラスアルファの求められる中で、そう明言したのはK氏だけだった。

当時、オフレコの会で「可能な限り努力し規定に沿って成長しているにも関わらず、応援してくれていると理解はしているが頑張れと言われると困惑する」というような発言をしたことがある。

実際のところ助けてもらう方が多かったので、それはそれでありがたいこととして対応はしていた。

そんな経緯をK氏が知っていたかは不明なのだけれど、期待されていないという解放感は大きかった。

まずは自分の役割を全うすること。

世渡りより先に足場を固めろ、ということだったのかもしれないし、お手間をかけさせると機嫌を損ねる、K氏の人間性あふれる側面だったのかもしれない。

そこからはなんとなくうまく行くようになった。元気よく朝の挨拶を投げつけ、返事はあったりなかったり、淡々と各自の役割をこなして、挨拶を投げて終わる一日。

逆に言えば愛嬌も機嫌取りも不要だったので、効率よく自分の成長に注力できた。

教育とかマッチングとか考え方は色々あるだろうけど、こんな成長のさせ方もあるという話。

お題「私の師匠」