タニオカアイ

ウソとホントの間の話

走っているときの気持ち

寒くない程度に皮膚を覆って、汗をかいても構わない服を着る。靴紐のリボンを編み目にはさむ。イヤフォンを耳に、音楽とロガーを起動する。

目標範囲のBPMにあった音楽をシャッフル再生。この曲はいい。この曲は今じゃない。スキップ。おなじみの曲。こんな曲あったっけ。

体が真っ直ぐになるように前を見る。足元になる場所が平らか確かめながら。視界に入る景色が流れていく。ときどき人、まれに猫。

吸気より呼気を意識する。胸郭がどうとか血中濃度がどうとか考える。

しんどくなると教科書に載っていたランナーの話を思い出す。いわく、つぎの電柱まで走ろう。

つぎの目印が遠い。腕を後ろに振る。脚よりも、腕ならまだ動く。うんざりしながら、腕を後ろに振れば脚は前に出ると言い聞かせる。

ぽっかりと、なにも考えられなくなる瞬間が来る。頭の中のなにもかもなくなる。このために多くの人は走っているんじゃないかと思う。快感より遠くにある感覚。

ロガーが終了を告げる。徐々にスピードを落として、歩く。汗が噴き出す。拍動が大きく響く。

火照っているうちにぬるいシャワーを浴びる。熱を持っている場所をクーリングする。