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タニオカアイ

ウソとホントの間の話

関川夏央 谷口ジロー 『坊ちゃん』の時代

あ、「孤独のグルメ」の絵だ。と思って手に取った一冊。

新装版『坊っちゃん』の時代

新装版『坊っちゃん』の時代

夏目漱石「坊ちゃん」が書かれた、当時の大学の状況や同時代の作家とすれ違う場面、「坊ちゃん」のモデルとなった師弟たちとの関わりなどから、「坊ちゃん」の時代に夏目漱石という人がどんな風だったかを描く。

歴史に出てくる作家の残念エピソードはたまに聞くけれど、夏目漱石も例に違えず残念な人である。「孤独のグルメ」は久住昌之原作で、こちらとは違うのだけれど、じゃあ作画の谷口ジローのカラーなのか、「孤独のグルメ」の五郎さんともども、残念ダンディズムが満ちあふれている。

その残念さは突出したアウトローというわけではなく、自分や現実と向き合うからこそ残念になってしまうもの。雑に生きていればこうはならない残念さ。生真面目さは客観的には滑稽に見えるわけで、漱石本人が記した「坊ちゃん」にもまたそういった残念さがある。

「坊ちゃん」を読む前後に読むとより楽しめる。

本作ではあまり登場しない、妻である夏目鏡子「漱石の思い出」を原作にした、尾野真千子主演のドラマ「夏目漱石の妻」の放送が終わるそうなので一筆。

作家の妻といえば演劇になるけれど、野田秀樹大竹しのぶ「売り言葉」。高村光太郎の妻であり「智恵子抄」の智恵子が吐き出す諸々が恐ろしい。しかもこれまた「坊ちゃん」の時代の話な上に両作家に交流があったらしく、いやもう、やっぱり作品と人格は一致しない。

漱石の思い出 (文春文庫)

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二十一世紀最初の戯曲集

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