タニオカアイ

ウソとホントの間の話

蓮實重彦 伯爵夫人

不穏な中でもどこか優雅な戦前、旧華族である僕と、その屋敷に身を寄せる伯爵夫人。僕は伯爵夫人に導かれ、ある空間でその告白を受けることになる。

実験的、連鎖する構成、無限を示すモチーフの表現するメタ

表現手法としては、筒井康隆ダンシング・ヴァニティ」や村上春樹「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を連想させる。

戦争前夜ということで、猥褻と「軍靴の響き」的な対比もあり。

フィクションについて

本物より本物らしく見える偽物の魅力

また

明日のあなたにとって、今日ここでわたくしがお話ししたことなど何の意味も持ちえないというかのように、すべてががらがらと潰えさってしまうという、いわば存在することのない場所がここなのです。

とある。

本書は著者の研究対象である「ボヴァリー夫人」を記したフローベールの「感情教育」を差し置いて語ることは難しいのではないだろうか。ただし「感情教育」を理解しようとすれば、これは当時の国家・歴史的背景を踏まえる必要があり、途方もないわけで。

なお、例の三島由紀夫賞における著者の態度・発言については、「物語批判序説」内フローベール「紋切型辞典」関連によって説明がつくかもしれない。

特徴的な擬音や卑猥な表現に陳腐なところがみられず、売れ筋小説では読むことのできない、名前だけで商いの成立する作家でしか困難な作品でもある。

伯爵夫人

伯爵夫人

ダンシング・ヴァニティ (新潮文庫)

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世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

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軍靴の響き (角川文庫)

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感情教育(上) (光文社古典新訳文庫)

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紋切型辞典 (岩波文庫)

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物語批判序説

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